2021年6月7日 ダニエル・バレンボイム ピアノリサイタル
フェスティバルホール
1階ボックス席A列4番
ダニエル・バレンボイム
ベートーベン
ピアノソナタ 第30番
ピアノソナタ 第31番
ピアノソナタ 第32番
普段はどんなに聴き馴染みのない作品であっても、所謂コンサート前の“予習聴き”はしない主義だけど、今回は例外。この2ヶ月ほど、最後の3つのソナタを徹底的に聴きこんだ。自宅にある10種類ほどあるポリーニ、グルダ、バックハウス、ケンプなど有名どころの全集CDからとっかえひっかえ繰り返しなんども。(いつか必ず聴くから…と買い集めていたボックスセットもついにその時が来たぁ)、そして特注スタンウェイによるバレンボイム5度目の最新録音CDも勿論。本来なら、さらに加えて4月28日に京都ムラタホールでの小山美知恵の演奏会も聴いて…のはずが、残念ながらこちらは来年に延期となってしまったけど…
そして徹底した“予習聴き”を通じて感じたことは、この晩年の傑作は聴き手にも相応の人生経験が求められれるのだということ。少なくとも凡人である私は、還暦を越えてやっと平穏のなかに込められた深遠さを感じとることができるようになったみたい。まったく前掛かりになることなく、あまりにも自然なバレンボイムの演奏の素晴らしかったこと。もしこの演奏を20年前、いやほんの10年前に聴いたとしたら、自己主張のない教科書的な演奏といったあまり前向きでない感想を持ったかもしれない。アリエッタの浄化された空間に身を置く幸せを感じて、演奏会が終了した。ほんと、素敵な時間だった。