あーと屋のほぼ大阪クラシック演奏会気まま日記

2020年02月

2020216  新国立劇場 『セビリアの理髪師』

 

新国立劇場オペラパレス

1523

 

指揮            :アントネッロ・アッレマンディ

演出            :ヨーゼフ・E・ケップリンガー

オーケストラ    :東京交響楽団

チェンバロ      :小埜寺 美樹

 

アルマヴィーヴァ伯爵   :ルネ・バルベラ

ロジーナ               :脇園 彩

バルトロ               :パオロ・ボルドーニャ

フィガロ               :フローリアン・センペイ

ドン・バジリオ         :マルコ・スポッティ

ベルタ                  :加納 悦子

フィオレッロ           :吉川 健一

 

“セビリアの理髪師” は大好きで、いつも観終わった後、幸せな気分になる。今回のように歌手全員のバランスが取れていて、しかも演出を楽しめる公演では、終わったあとに“もう一度通して観たい”とすら思ってしまう。

 

ポップなデザインで統一された立体的な舞台装置とそれを生かし切った演出は秀逸の一言で、吊りと照明でお茶を濁す、ありがちなオペラ公演とは違う。オペラハウスはこうでなきゃね。5列目中央の席なので、計算された廻り盆と舞台上の人物の動きを、理想的な位置から鑑賞できたのは何よりだった。チェンバロは柔らかく温かい音で魅力的だったし、小型編成のオーケストラは弦が薄くならず、管楽器もふくよかな音色で良く弦とバランスして、満足のひとこと。やはりオペラは良い席で観るに限る。

 

序曲演奏の時、主要人物6人が順次パントマイムで登場しながら舞台前方の紗幕手前に整列すると、奥舞台の廻り盆の上に組まれたバルトロ邸が前にスライドしてきて、フィガロの合図とともに全員がバルトロ邸の中外に散っていくといく、という洒落た演出で、早々から虜にされてしまった。

 

1幕フィナーレで登場人物を徐々に増やしていきながら早口でセリフをまくしたて、フィガロを加えた主要登場人物6人がユニゾンとオクターブで同じ旋律を歌うまでの所謂ロッシーニ・クレッシェンドに対して、案外に第2幕の終わりがあっけなく感じるのも、また毎度のこと。兵士達がバルトロ邸内で洗濯物やら書類やらを引っ掻き回したり、空中に放り上げたりの大騒動が視覚として加わって、アドレナリンが放出されっぱなしの興奮状態を脳が覚えているため、なおさら。“あっ、終わっちゃった。もっと(この音楽に)もっと浸っていたいのに…(残念)”と思いながらの終幕。

 

いずれ再演されたら、また是非観たい。


※ オペラのタグを作りました。


20200206_新国_セヴィリアの理髪師
 

 

2020215日 イーヴォ・ポゴレリッチ ピアノリサイタル ザ・シンフォニーホール 

 

ザ・シンフォニーホール

1G21

 

ピアノ: イーヴォ・ポゴレリッチ

 

J.S.バッハ      :イギリス組曲 第3

ベートーベン    :ピアノソナタ第11

ショパン        :舟歌 嬰へ長調 OP60

                    :前奏曲 嬰ハ短調 OP45

ラヴェル        :夜のガスパール

 

バッハの組曲、ベートーベンのソナタ、ショパンの後期作品、そして超絶技巧のラヴェルと、ピアノ音楽史を一串にしたような魅力的なプログラム。ほんの五日ほど前、この日の大阪滞在が決まったことで半ばあきらめ気味にチケットサイトを覗いたら、なんとG21列目というピアノを聴くには最高の席がポッコリと空いているではないか! こりゃラッキー。ちなみに明日の東京新国オペラパレス “セビリアの理髪師” も、これまた平土間前方ど真ん中のチケットが偶然にも買えた。こりゃついているぞ。この調子でロトも当たんないかな。

 

クラシック音楽ファンといってもオーケストラ作品中心で、マーラーだのリヒャルトシュトラウスだの、さらにはワーグナーの楽劇だのを日ごろ好き好んで聴きまくっている一方で、ピアニストにもピアノソロ作品にもめっぽう疎い。膨大なピアノ作品群、そして大家と称されるピアニストから新進気鋭まで、それらを隈なく追っかけていたら、それだけで人生が終わってしまいそうなくらい。それでもショパンコンクールでの逸話、そして精神面での苦境からの復活といったストーリーとともに記憶されるポゴレリッチは、是非とも聴いておきたい。

 

そのポゴレリッチ、やはり聴いてよかった。他の著名なピアニストとは明らかに違う、とても突き抜けた存在ではないだろうか。ピアノ(一つの躯体)から、こんなにも多様な音が鳴らせるものなのだと、実のところ初めて知った。そしてその単音一つひとつがここまで研ぎ澄まされているなんて、ほんと奇跡のよう。かつてはとてもスローテンポな演奏スタイルだったらしいけど、今日の演奏はバッハもベートーベンも実直で真っ向勝負で、特異さ、異様さは一切なし。ショパンは、櫂でゆっくりと小舟を漕ぐというより、腕っ節に自信のある船頭によりグイグイ進んでいくような演奏で、また次の前奏曲も全く病んだショパンじゃなかった。そしてショパン2曲演奏の後、袖に一度引っ込むことなく演奏を始めた夜のガスパールも圧巻の一言。いや~、凄かった。すべてが記憶に残る演奏だった。

 

 
20200215_ポゴレリッチ_1


ザ・シンフォニーホールの男性トイレにある、いつもの手書きボード ~スタッフさん、日付が間違ってますよ~
20200215_ポゴレリッチ

 

202029日 長崎 出島 カピタン部屋 コンサート 長崎県オペラ協会 

 

長崎 出島 カピタン部屋 2

 

冬のメドレー

長崎の歌メドレー

ドゥ-ニ:音楽劇『二人の猟師とミルク売り娘』より“ペレットの歌”

マスカーニ:『カヴァレリア・ルスティカーナ』より間奏曲“アヴェマリア”

J・シュトラウスⅡ:『こうもり』よりアデーレの笑いのアリア“私の侯爵様”

見上げてごらん夜の星を

J・シュトラウスⅡ:『こうもり』より“シャンパンの歌”

 

妻との長崎市内観光で訪れた長崎出島で、たまたま聴くことができたカピタン部屋の2階での30分ほどのミニ・コンサート。“カピタン部屋”といっても、鎖国時代にオランダから日本の出島に赴任してきた商館長の住居兼事務所で、出島で最も大きく、日本側の役人との接待・社交の場としての役割を担っていた、2階建ての大きな建物。その2階にある豪華なダイニングスペースに続く、南側に面した20畳(?)ほどの大広間に電子ピアノを置き、畳のうえに赤い毛氈を敷いてコンサートスペースとしたもの。

 

観光中にこのコンサートのチラシや案内を見かけたわけでもなく、たまたまボランティアによる約一時間の出島紹介ツアーの後、ダイニングスペースをじっくり鑑賞したい、という妻の求めでカピタン部屋に立ち寄ったことで出会えたコンサート。観客は私たち夫婦の他にあと10名ほど。歌い手は、長崎県オペラ協会の女性歌手3名。歌手名のアナウンスもプログラム配布もない、とてもささやかなコンサート。それでも観光で訪れた地で、こうした暖かく優しい雰囲気の演奏会に出会えることは本当にうれしいものだ。


演奏された作品やその作曲者については、一切書かないことをこのブログ上でのルールにしているけど、『二人の猟師とミルク売り娘』に限っては備忘として記しておきます。

曲名だけは携帯メモに控えたものの、後で調べてみると江戸時代文政の1820年に出島で初めて、つまり日本で初めて、当時の商館長の愉しみとして、ここカピタン部屋の広間で上演されたオペレッタなのだそうだ。イタリア人 エジーディオ・ロムアルド・ドゥーニによるフランス語オペラ・コミックが、オランダ人によって上演されたらしい。それが大変うけて長崎奉行を迎えて再演されたとのことなど、クラシック音楽ファンとしては、なんとも興味深い歴史が垣間見えてきた。こうした珍しくも貴重な作品を歌って聴かせてくれた、長崎県オペラ協会の歌手の皆さんに感謝!

ちなみに、イタリア人によるフランス語オペラ・コミックがオランダ人により日本で上演…ということなのだけど、今、知人に紹介されて読んでいる石井宏著“クラシック音楽意外史”でのクラシック音楽におけるイタリアオペラの位置づけに重ねると大変興味深い。

演奏会の終了後に、ブログ掲載の許可を頂いて撮った写真がこちら。ピアニスト(左)と長崎県オペラ協会所属の歌手の方々。
20200209_出島コンサート


202024日 読売日本交響楽団 第25回大阪定期演奏会 

 

フェスティバルホール

2階 定期会員席

 

マーラー               :花の章

ハチャトゥリアン       :ヴァイオリン協奏曲

  ―― アンコール     J.S. バッハ:パルティータ第2番 サラバンド

マーラー               :交響曲第1番 『巨人』

  ―- アンコール      J.S.バッハ:アリア (マーラー編)

 

指揮            :山田和樹

ピアノ          : ネマニャ・ラドゥロヴィチ

 

日本人若手指揮者のなかでもFAST TRACKを突き進むかのように着実に実績を積み上げている山田和樹。指揮台での身のこなしは、もうすでに貫禄十分で、ハチャトゥリアン独特のリズム変化に満ちたコンチェルトでの一心不乱に弾きとおすラドゥロヴィチにオーケストラをぴたりと添わせるバトンテクニック、そしてマーラー『巨人』での、颯爽と進めていく全体の構成力とオーケストラの統率力はさすが。

 

“花の章”でのホルン4本に対し、“巨人”交響曲では楽譜指定通りの4菅編成でホルン7本(さらに終楽章コーダー時のTrTb各1本)。1楽章、2楽章での反復は無し。“あれっ、こんなんだっけかぁ?”といった耳慣れない(聴きなじみのない)響きのする箇所が幾つもあったのだけど、私の気のせい?それとも指揮者による指示? マーレリアンの友人がお聴きであれば、是非尋ねたいところ。

 

中学生1年にお年玉で最初に買ったクラシック音楽のLPがオーマンディ・フィラデルフィア管のマーラー“巨人”花の章付き(CBSソニー盤)。還暦の誕生日をあと数日で迎えようとしているこのタイミングで、おそらく数十年ぶりに“花の章”を聴くとは、中学生時代がフラッシュバックして、なんとも感慨深い。

 

20200204_読響_大阪定期
 

2020130日 日本センチュリー交響楽団 第242回定期

 

大阪ザ・シンフォニーホール

1階定期会員席

 

指揮            :小泉 和裕

 

シューマン      :交響曲第1番 変ロ長調 作品38『春』

フランク        :交響曲 ニ短調 

 

小泉和裕の指揮するシューマンと言えば、一昨年11月の大阪フィル第523回定期の第2での各パートの音量・音色に神経をいきわたらせた全体に抑制のきいた演奏だったと記憶している。それ故に今回の“春”も同様な音楽を想像し期待していたものの、あに図らんや、オーケストラを開放的に鳴らした演奏。日ごろ、この210型のオーケストラが後期ロマン派のオーケストラ作品を演奏するときのようなパワー全開のいつものサウンドで、私が期待していたシューマン像とちょっと違うな、と思いながら聴いていいた。

 

一方で後プロのフランクは、そうしたアプローチが見事にハマった、快演。このオーケストラの特徴である明るめの音で、いつもながら思いっきり鳴りながらもしっかりと均整が保たれていてうるさくならない。フランクのニ短調交響曲って、ほんと何時ぶりだろう。こんな魅力的な曲だったっけ。

 

 
20200130_日本センチュリー定期

20200130_日本センチュリー定期_1

このページのトップヘ