あーと屋のほぼ大阪クラシック演奏会気まま日記

2019年06月

2019621日 大阪フィルハーモニー第529回定期演奏会 1日目

 

フェスティバルホール

定期会員席

 

指揮            : ヨエル・レヴィ

 

モーツァルト    : 交響曲第38番 『プラハ』K504

ヤナーチェク    : 狂詩曲『タラス・ブーリバ』

ヤナーチェク    : シンフォニエッタ

 

38番『プラハ』はハフナー交響曲以降の後期交響曲のなかで一番好きな作品。その演奏がなんとも素敵だった。出だし木管が少し乱れたのも早々に修正され、シンフォニックな響きをしっかり保ちながらも常に柔らかくレガートに徹した演奏は、聴いていてなんとも心地いい。第1楽章第2主題の可憐さは思わずうっとりさせられる。

 

シンフォニエッタは、デュカスのラ・ペリのファンファーレとともに耳にするたびに高校時代が思い出される、なんともノスタルジーを掻き立てる作品。第1楽章ファンファーレで、ユーフォニームに続くティンパニとのユニゾンがバス・トランペットだったり(トロンボーンだと思っていた)、第3楽章でホルンの窒息しそうな連続パッセージがあったりなど、かつてのステレオ(LP盤)では気づかなかったたくさんの発見があって楽しかった。

 

ただし演奏は、残念ながら少々不完全燃焼ぎみ。いつものとおりの復習を兼ねて録画しておいたフルシャ・N響の演奏(N響第1909回定期:先週のクラシック音楽館)に比べて、特に第3楽章など物足りないし、エンディングでのバタつきも残念なところ。翌日(2日目)は演奏もこなれて、より踏み込んだ演奏になっていたのだろうか。聴けなくて残念。

 

 
大阪フィル_529回定期


2019618日 松浦奈々 ベートーベン ヴァイオリンソナタ全曲ツィクルス 第3回 

 

ザ・フェニックスホール

1階C19

 

ヴァイオリン           :松浦 奈々

ピアノ                 :須関 裕子

 

ベートーベン          ヴァイオリンソナタ第4番 イ短調

                       ヴァイオリンソナタ第9番 イ長調 『クロイツェル』

                       ヴァイオリンソナタ第10番 ト長調            

  ―  アンコール            ロンド

 

大変満足度の高いコンサートだった。特に休憩を挟んで演奏された最後の10番ソナタの集中度はすばらしい。松浦奈々の音程が終始、おどろくほど正確である。そして二人の奏者の呼吸が見事に一致していた。収録用のマイクがステージ中央の高い位置に置かれていたので、録音のバランス取りの都合だったのだろうか、松浦奈々がピアニストの真横に立って演奏したことも良かったのかもしれない。

 

実のところ過去2回の演奏会を通じて、特段に個性的な音色や過度なダイナミズムをもたせることなく、また古典主義を追求するとか、ロマンティシズムを過度に表に出すといった表現の振幅を感じさせない中庸な演奏スタイルを、ついつい凡庸と捉えてしまっていた。特に、2回最後に聴いたアンコール曲〝ロマンス”でのピアノ伴奏のキマジメさがそれを印象付けてしまっていた。

 

中期の傑作〝クロイツェル”と唯一の後期作品10番をプログラムしたこの日のツィクルス最終第3回がどのようなものになるのか、すこし身構えて臨んだ演奏会だったけど、結果は冒頭に記したとおり。充実の最終回で見事ツィクルスを終えた松浦奈々に大きな拍手!


松浦奈々_バッハ無伴奏_20190204

 

2019614日 関西フィルハーモニー管弦楽団 第302回定期演奏会

 

大阪ザ・シンフォニーホール

3LLD4

 

指揮            : 鈴木 優人

ピアノ          : 小菅 優

 

黛 敏郎       : シンフォニック・ムード

矢代 秋雄     : ピアノ協奏曲

  ― アンコール  矢代 秋雄: “夢の舟”(指揮者との連弾)

芥川 也寸志   : 交響曲第1

 

1950年代から60年代に書かれた日本人作曲家の作品を、小品・コンチェルト・交響曲と敢えて定型プログラミング。もっともシンフォニック・ムードも決して小品などではないし、前半が終わった時点で開演から1時間を経過するなど、たいへん内容の濃い演奏会。大概は満席になる関西フィルも、こうした曲目だとざっと6割ほどの入り。

 

演奏会プログラム(冊子)にある栫大也《かこいまさや》氏の、単に作品紹介ではなく、三人の作曲者とその時代背景の考察に各1頁を割いたプログラム・ノートは、とても内容深く貴重なもの。いつもはさっと目を通して、そのままホールのごみ箱送りだけど、今回のものは私にとって永久保存版の価値あり。毎度のこと、週末にコンサートの復習でプログラム曲のCDを探してみたら、なんとNAXOSの “日本作曲家選輯~片山杜秀エディション” に芥川也寸志の交響曲第1番が含まれていなかった。残念、もう一度振り返りで聴いてみたい。

 

それぞれについての戯言

シンフォニック・ムード

2部の狂乱状態の大音量のなか、チェロがひたすら超高速のパッセージを弾いている(LLD席なので正面に見える)けど、音は完全に埋没してしまって聴こえない。ありゃ、きっと奏者はたまんないだろうな、と思いながら聴いていた。

 

ピアノ協奏曲

ピアノソロは暗譜。もし一瞬でも記憶がとんだら、どうなるんだろうと思いハラハラしながら聴いていた。

 

交響曲

管弦打、各セクションが混とんとすることなく耳にとどく。オーケストレーションに無理が無い、ということだろうか。それでも、6本のホルンは金管合奏での中音域の厚みをもたす役割に終始しているなど、聴き映えはもうすこし。ホルン奏者、つまんないだろうな。

 

〝欧和饗宴_鈴木&小菅が三大巨人に挑む衝撃の日本プログラム”とは、相変わらずのインパクト抜群のコンサートサブタイトル。10月のハチャトゥリアンの交響曲第2番『鐘』といい、今期の定期ラインナップでの関西フィルの攻めの姿勢は在阪オケ随一。ちなみに10月定期のタイトルは〝轟音警鐘…阿鼻感興の音楽絵巻、壮絶無比の野心作《鐘》、ついに上演”だ。指揮者は爆演系がお好きな藤岡幸夫なので、否が応でも期待してします。今週木曜日、いよいよチケット発売だ。

 

関西フィル‗定期‗20190614
 

2019613日 日本センチュリー交響楽団 第236回定期

 

大阪ザ・シンフォニーホール

1階定期会員席

 

指揮          :ヤーノシュ・コヴァーチュ

ピアノ          :ガーボル・ファルカシュ

 

バルトーク      :舞踏組曲 BB86a

リスト          :ハンガリー狂詩曲 第2 S.244

リスト          :ハンガリー幻想曲 S,123

  --- アンコール  ショパン :〝春”ト短調Op74-2

バルトーク      :弦楽器、打楽器、チェレスタのための音楽 BB 114

 

日ごろこのブログに書いているとおり、ゲンダイオンガクはからっきしで、音楽史において鑑賞の対象として捉えられるのはバルトークあたりまでが限界。いささか名曲演奏会のようなラインナップが続く今期の日本センチュリー定期で、この日は滅多に生演奏を聴けない〝弦チェレ”※をメインに据えた魅力的なプログラミングで、とても楽しみにしていた。

 

ヤーノシュ・コヴァーチュの演奏解釈は意外なほど中庸で、中間2曲のリストはもっと民族色豊かなコテコテのお国もの演奏を想像していただけに、少々拍子抜けしたというのが正直なところ。他方で、バルトークの〝弦チェレ”※ は最初にこの曲を知ったカラヤン・ベルリンフィルのLP盤の醒めた厳しい曲のイメージからは離れ、ほのかな暖かみを感じさせる不思議な音楽体験だった。

 

※ 日ごろからマラ6やらシベ2などといった珍妙な曲名の省略は〝私クラシック音楽マニアです”とのスノッブ臭を感じてしまい、どうにも好きになれない。でも、さすがにこの曲名は語るに長すぎる。

 

 
日本センチュリー‗定期‗20190613


201968日 デュトワ指揮大阪フィルハーモニー  リヒャルト・シュトラウス 『サロメ』

 

フェスティバルホール

2329

 

指揮            : シャルル・デュトワ

サロメ          : リカルダ・メルベート(ソプラノ)

ヘロデ          : 福井 敬(テノール)

ヘロディアス    : 加納 悦子(メゾ・ソプラノ)

ヨナカーン      : 友清 崇(バリトン)

 

デュトワがサロメを振る。こんな大イベント、聴き逃すわけにはいかない。

幸いにして〝サロメ”は登場人物が多い割に比較的単純なストーリー展開の作品。要所でステージ上部に表示された字幕に目をやる程度にして、極力、聞こえてくる音に集中してリヒャルト・シュトラウスの音楽を、そしてデュトアの指揮を堪能した。かつて幾度となくガッカリな演奏を聴かされてきた大阪フィルの、あまりにハイレベルな演奏に大変満足。聴き終わった直後〝あ~そうだった、これ大阪フィルだったんだ”とおもわず声に出してしまった。

 

場面転換の音楽や、全曲のなかでも異質な音楽〝7つのヴェールの踊り”の、ここぞとばかりにオケを操るデュトワに応えた大阪フィルが見事だったのは勿論のこと、全曲を通じてテキストにそって緻密に描かれた音楽を、時に艶めかしく妖艶に、また時に冷酷にと描き分けたデュトワの手腕は、まったく凄いとしか言いようがない。2週間前のフレンチ・プログラムの定期、そして今回のサロメの体験を通じて〝偉大な指揮者は、オーケストラの音を変えることができるのだ”と、改めて実感した。

 

416型フル編成のオーケストラの大音量をものともせず長い最後のモノローグを歌ったタイトル・ロールのリカルダ・メルベートだけでなく、福井敬のヘデロ、加納悦子のヘロディアス、そして友清崇のヨナカーンと、日本人の主要役も負けず劣らずで、今回の公演の完成度・満足度を大いに押し上げた。でも天井に吊るされたスピーカーからのヨナカーン(地下牢)のエコーを効かせた声が舞台上の歌手の生声よりも大きいのは明らかにPA調整の失敗。 

 
サロメ‗デュトワ‗20190608

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