2019年7月17日 読売日本交響楽団 第23回大阪定期演奏会
フェスティバルホール
2階 定期会員席
ラフマニノフ :ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番 ハ短調
―― アンコール シューベルト :楽興の時 第3番
ホルスト :組曲『惑星』
指揮 :井上道義
ピアノ : ルカ・ドゥバルグ
女性合唱 :昭和音楽大学
ステージに現れた、ちょっと背中を丸めた神経質そうな風貌のルカ・ドゥバルグの姿を見て思い出した。3年前にサントリーホールでギドン・クレーメルとのデュオ・リサイタルで聴いている。その時の夜のガスパールの耽美な演奏はその日の最大の聴きものだったし、演奏会パンフレットに記載されたフランス人ピアニストの驚愕の経歴と、なによりクレーメルとのデュオでの繊細な演奏に感嘆したことを覚えている。だからというわけではないけど、ラフマニノフ2番の定番的演奏様式である、大きな体格のロシアピアニストによる重量級の演奏ではなく、なぜか気品に満ちたフレンチな雰囲気に満ちていた。特に2楽章はその美質にあった、知的で端正な美しい演奏だった。
ブラムウェル・トーヴェイの代役でバトンならぬタクトを受けたのが井上道義だったことは、私としては文句なし。コンチェルトでは、少々突っ込み気味のピアノを引きとどめるのではなく、それに応えるように破綻しないギリギリのところまでオーケストラをドライブさせる技量は見事なもの。終楽章カデンツァのあとオーケストラの第2主題のマエストーソ始まりでのティンパニの一打や、ソステヌートで朗々と歌う弦に対して厚み十分な音のホルンを際立たせるように吹かせるなど、壮麗な音楽作りは期待通り。
期待通りは"惑星"もしかりで、先日の佐渡裕指揮でただ巨大編成を楽しんだだけの4オケ・スペシャルとは、やはり次元が違う。どんな強奏の場面でも、すべてのセクション・パートが全く濁ることなくクリアに聞こえてくるし、音楽の運びもとても理にかなっている。このブログを始めた4年余りで〝惑星”は3度目だけど、木星中間部での歌いまわしに限り大植英次に軍配を上げるとして、全体を通じては井上道義の演奏が一番。
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