“201933日 びわ湖ホール プロデュースオペラ ワーグナー『ジークフリート』第2日目 

 

滋賀県立芸術劇場 びわ湖ホール

1階 1J16

 

指 揮           :沼尻 竜典

演 出           ミヒャエル・ハンペ

 

ジークフリート  : クリスティアン・フォイクト

ミーメ          : 高橋 淳

さすらい人      : ユルゲン・リン

アルベリヒ      : 大山 大輔

ファフナー      : 斉木 健詞

エルダ          : 八木 寿子

ブリュンヒルデ  : ステファニー・ミュター

森の小鳥        : 吉川 日奈子

ジークフリートの角笛 [ホルンソロ]  福川 伸陽

 

ブリュンヒルデ役のステファニー・ミュターの太く声量たっぷりの歌声は、時に録音で聴くビルギット・ニルソンを思わせるものの、ヒステリックな絶叫に近いところもあり、まだ夢見る乙女であるブリュンヒルデとしてはちょっと貫禄がありすぎたか。“神々の黄昏”であればピッタリはまりそうだ。それにしてもジークフリートがあまりにも非力だった。第1幕での高橋淳の熱演にかすんでしまったミーメとのやり取りも、聞かせどころの “鍛冶の歌” がオーケストラの強奏を突き破るように聞こえてこないのも、最終幕でのヴォータンとの対峙、そしてブリュンヒルデとの長大な2重唱に備えてのことだろうと贔屓目に聴いていたものの、一向に上向いてこないどころか最後の最後まで声が出ない。それだけジークフリートを歌える歌手はなかなかいない、ということなのだろう。

 

高橋淳のミーメは演技も含め、初日よりずっと良い(特に第1幕)。それでも狡猾で屈折したミーメの性格描写は残念ながらまだまだ弱い。ほんと、この役は(この役も…、か)難しい。ユルゲン・リンのヴォータンは、これぞワーグナー楽劇のバス歌いと思わせる声量で、野太い声で語るような歌いっぷりは、音程云々など向うに押しやってしまうような魅力でいっぱいだった。来年の“神々の黄昏”ではハーゲンを歌ってくれないかな。…とここまで書いて、またもやベルリンドイツオペラのリング日本初演(東京文化会館)で聴いたマッティ・サルミネンを思い出した。第1幕の“見張りの歌”を聴いた時の背筋が凍るような衝撃はいまだに忘れられない…。

 

“ラインの黄金” から継続する、常に舞台最前面に紗幕を下ろしたままでのプロジェクションマッピングとCGを駆使する舞台演出において、本作第2幕は空間を最大限に利用したという意味で、もっとも成功だったのではないか。舞台いっぱいに広がる暗く深い森、目線と同じ高さの等身大のジークフリート、舞台奥にプロジェクションマッピングで投影された巨大な蛇(まさに大蛇)、そして舞台前面の紗幕の見上げるような位置に投影された小鳥と、なんとみごとな構図だろう。さて、来年の “神々の黄昏” も舞台前面に終始、紗幕が下ろされているのだろうか。ハーゲンの軍勢が舞台いっぱいに登場する第2幕だけは紗幕を上げて、群衆(ギービヒ家の家臣たち)の動きをはっきり見せつけて欲しいのだけど…。

 

やはり今日の京響は吹っ切れたように鳴っていた。これは一昨年の “ラインの黄金”、そして昨年の “ワルキューレ での感想と全く一緒。第3幕第3場への舞台転換からブリュンヒルデの目覚めまでの音楽(“金切り声で叫ぶ歌手と大音量のオーケストラによる、ただうるさい音楽” とワーグナーの楽劇を切って捨てるアンチワーグナーの人にこそ、是非聴かせたい)での透明で精緻の極みのような演奏は、これぞ京響と思わずにいられない。

 

それでも、昨日と同様、“愛の挨拶の動機” による最初の歓喜の場面から以降が弛緩した。沼尻竜典の全体的に遅めのテンポでも主役2人の歌唱でもなく、棒立ち気味につっ立ったまま歌わせた演出によるものだろうと思う。ブリュンヒルデが夢見る乙女(処女)から同床異夢の最後の2重唱に至るまでの心理的変化のプロセスが埋没してしまい、ややもすると退屈な時間にも感じる、そう、ワーグナー楽劇で最も避けたい状態に陥ってしまった。私として、今回の2日間の公演で唯一、残念な点だ。

 

さあ、びわこリングもいよいよ来年の3月に完結ですね。1年後、”愛の救済のモチーフ”ともに、ワーグナーの毒にどっぷりと浸かるのを今から楽しみにしております。

 

 
ジークフリート_びわこホール_20190302


1987年 ベルリンドイツオペラによるリング日本初演の会場(東京文化会館)で買ったポスター
パネルに入れて大事に保管
ルネ・コロのジークフリート、イエルサレムのジークムント
カタリーナ・リゲンツァのブリュンヒルデにロバート・ヘイルのヴォータン
そしてなんとマッティサル・ミネンはファーゾルト、フンディング、ファーフナー、ハーゲンの4役をこなした
いま思い出しても凄すぎる!!!!
神々の黄昏_11111