2019年2月18日 音響学から読み解くフェスティバルホールの魅力 
クリエイティブ・アイランド・ラボ中之島・サイトツアー/ トーク07 

 

18:30   開始

 

主催者よりこのイベントの趣旨説明と登壇者紹介

曰く“大阪中之島の魅力を戦略的、文化的に発信するための…云々…”、チラシ裏面の文言の通りですね。

 

個人的に残念だったのは、参加者が当初予定の50名から150名になったことで(受付での私の登録番号は30番台だったので、当初の50名枠に入ってた)、バルコニーBOX席が “席を移動しながら聴き比べ” の対象から外されたこと。

 

 

1835  席を移動しながら聴き比べ

 

大阪フィルのチェロ・トップ奏者近藤浩志氏によるサン=サーンス “白鳥” のワンメロディーとJ.S.バッハ “フランス組曲3番メヌエット” の冒頭フレーズ(両方で1分ほど)を、1階席前方、1階席後方、3階席に移動しての聴き比べ。演奏場所はステージ中央。

 

1階席前方では227番、“1階席後方” では最後列3030番、そして “3階席” では、あえて最後列右端の872番に着席。

 

聞き比べの感想

1階席前方227     直接音と間接音の比 73 

1階席最後列30       直接音と間接音の比 19 音量の減じ具合1割程度

3階席最後列72       直接音と間接音の比 19 音量の減じ具合1割程度

 

1階席最前列(実際には2列目)でも定位がはっきりしていながら、間接音も申し分ない。どこかのホール(複数あるなあ)のように、音が頭の上から後方に飛んで 逃げていくのを虚しく感じるようなことなど全くない。これまであえて最前列席をパスしてきたけれど、一度オーケストラのコンサートをこの位置で聴いてみたい。

 

3階最後尾でも音がしっかり届く。ステージ最前列に比べて、音量の減じ具合がせいぜい1割程度なのは驚愕。3階の端っこの72列で聞こえる音は、中域から低音域にかけてふくよかで自然な広がりを感じられるうえに、壁伝いに耳に届く残響が実に心地いい。そう、フェスティバルホールの3階最後列は実に音が良い!

 

 

1910 演奏者が演奏場所を変えて聴き比べ

 

近藤浩志氏がステージ上で場所を変えて同じ1分ほどの2曲を弾き、音の違いを定点で聴き比べ。演奏場所は、まずステージ中央(ど真ん中)、最前部(指揮台が置かれるよりもさらに前)、そして反響板を背にするような位置(ティンパニが位置するあたり)、そしてさらに反響板沿いに上手奥のドン詰まりの位置。

 

私はといえば、とっさにこの試みの意図を察して、席を一階席ボックス席前の1325番、そう可能な限りホール中央に移動して音の違いを体験。反響板沿い上手奥の突き当たりは別として、どの演奏場所も低域から広域までフラットに聴こえるし、直接音と間接音のバランスが適度で(もちろん、場所ごとにそのバランスは多少異なる)定位もはっきりしたうえで、豊かなホールトーンもあり、さほど差を感じさせるものではなかった。

 

1925 音響学の観点よりの解説

 

解説者 
  日高孝之氏
     株式会社竹中工務店 技術研究所リサーチフェロー
     新国立劇場、東京オペラシティを含め多くのホール音響設計に携わってこられたとのこと

   加藤浩介氏
      大阪大学工学研究科講師 音響学専門

 

以下、速記メモより

どんな音が好きかは、その人が育ってきた環境により二つの傾向がある。ステレオ装置の音を聴いてきた人は、メリハリ・アタックの効いた音、分離のよい、または粒立ちのいい音を好む傾向がある。一方で、生音(ライブ)を聴いてきた人はホールの響き、音響を楽しむ傾向がある。

 

3階で聴いたとき音量が減ったように感じなかったのは、チェロの高音域(高い音)は実は上に向かって飛ぶから。

 

古典からベートーベン、シューベルトの時代(もしくはチェンバーミュージック)、ブラームス、ブルックナーの時代の音楽、そして(プロコフィエフの名を挙げて)現代作品と、それぞれの時代の音楽ごとに求められる音の響きの長さ(残響)が異なる。ホール設計において、これらのどの時代にフォーカスするかがポイントとなる。

 

2,700の座席を有しながらどの場所で聴いても素晴らしい音響が得られるのは、日本ではフェスティバルホールが唯一。ホール設計において、音響学の観点だけでなく、構造的にすべての座席からステージが見えなければならない。座席を前の座席と被らないように千鳥格子で配置すると座席数が減るが、フェスティバルホールはあえて千鳥格子を採用している。客先からステージパフォーマンスを知覚できるのは距離35メーターまでといわれており、このフェスティバルもステージ中心点から35メーターの扇状になっている。

 

例えばホースから水を勢いよく出すような直線的な(指向性の強い?)音は固く感じられ、一方で音が拡散すると柔らかな音と感じる。ステージ上方の反響板はトランペットのベルのように、うまく音を飛ばすように考えられている。

 

このホールの天井桟敷(3階最後列)の音が良い理由は、広いステージ床で奏者の音が反響してホール後方に飛んでいくからだ。

 

=参加者からの質問

≪質問≫

大阪フィル定期の時のようにピット部分(16列目)もステージとして使った場合と、例えばウィーンフィル公演時のように、1列目から座席とした場合でどのような音の違いがあるのか?

≪お答え≫

この質問について、私もどのような回答をいただけるかとても興味深かったのだけど、残念ながら、日高孝之氏が ”ムジークフェラインザールとの構造上の違いについて” と質問を取り違えられた。

 

≪質問≫

シューボックス型ホールであれば、反響板の数や位置を調整するといったホール完成後の音響調整は可能だろうが、フェスティバルホールの場合は完成後に音響の調整はされるのか・できるのか。

≪お答え≫

ステージの木材が経年によって音響の変化をもたらすだろう。

 

 

1955 近藤浩志氏による演奏  

 

        J.S.バッハ 無伴奏チェロ組曲第3番 サラバンド

        カザルス 鳥の歌

 

 

このブログを始めての3年余りに限っても、実際にオーケストラを聴いたホール(オペラ・パイプオルガンコンサートを除く)を書き出してみると、ありゃりゃ、結構な数だ。う〜ん、フェスティバルホール、そしてザ・シンフォニーホール、いずみホールがある大阪は、どの都市にも負けないハイレベルでのクラシック音楽を鑑賞できる箱が充実していることを改めて認識する。(あそこのホールは“金返せ”だし、あそこのホールもたいしたことないぞ…)

 

フェスティバルホール                 

ザ・シンフォニーホール               

いずみホール                         

豊中市立芸術文化センター  

兵庫芸術文化センターKOBELCOホール   

サントリーホール            

NHKホール        

東京文化会館

東京芸術劇場                

東京オペラシティ・タケミツメモリアル 

すみだトリフォニーホール 

ミューザ川崎  

京都コンサートホール 

ロームシアター京都         

福山リーデンローズ
松江プラバホール              

ウィーン・ムジークフェラインザール         

 
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