20183日9日 大阪フィルハーモニー第516回定期演奏会 1日目

 

フェスティバルホール

1階定期会員席

 

指揮            : 井上 道義

ピアノ          : アレクサンデル・ガジェブ

合唱            : 大阪フィルハーモニー合唱団

 

バーバー : ピアノ協奏曲 作品38

  アンコール  ラフマニノフ :エチュード『音の絵』Op39 第5曲“アパッショナート”

ショスタコーヴィチ :交響曲第2番 ロ短調 『十月革命に捧げる』

ショスタコーヴィチ :交響曲第3番 変ホ長調 『メーデー』

 

日本センチュリーのハイドン・マラソンと被ってしまったが、そちらのチケットは知人にお譲りして、躊躇無く大阪フィルの定期を聴きにフェスティバルホールへ。4月からの来シーズン定期ラインナップには井上道義の名前が無いので、彼が定期を振るのはもしかしたらこれが最後になるかもしれない。そんな彼が選んだ曲は、東京でもまず演奏されることのないだろうショスタコーヴィチの第2番と第3番、しかも前半にバーバーのピアノ協奏曲を持ってきた。昨年2月定期で第11番と第12番を同時に演奏するという超重量級のプログラムも凄いが、今夜も聴き手に一切媚を振ることの無いプログラミング。全曲を破綻無く演奏しきった大阪フィルの集中力がすばらしい。

 

後半開始前に井上道義本人による前説あり…休憩の後なので“中説”になる。日頃から聴く前に余分なバイアスを持たされたり無駄話に終始するプレトークは無用、とブログで記しているけど、この日だけは大変興味深い内容で、面白くまたありがたい。“10代のころバーバーの『弦楽のためのアダージョ』をアメリカで聴いた(そのとき作曲家本人も会場にいた)、今日のピアニストは23歳、これから演奏するショスタコーヴィチは第2番を作曲したのが20歳、そして第3番が22歳”との前置きから、第2番、第3番についての説明あり。1920代のほんの一時期、ソビエト国内でアヴァンギャルドな芸術が許された時代に書かれた作品で、二十歳そこそこの天才ゆえの破天荒な作品だと思って聴いてほしい、といった内容。

 

いやはや、実に受け止めずらい作品だ。聴き終えた後、曲がまったく記憶に残らない。第2番、第3番を連続で演奏するから、なおさらのことだろう。福山の自宅に戻り、全音のポケットスコアを片手にCDで両曲を聴きなおしても “あれっ、こんな曲だったっけかぁ?”と思ってしまう。第12番終楽章の“勝利のファンファーレ”に似たフレーズが耳に残っているけど、ハイティンク、バルシャイの演奏を立て続けに聴いても、同じイメージで聴き出せない。プレトークで井上道義が、マーラーの“大地の歌”や“第9番”のフレーズが隠れて聞えるといった第3番も、何処の箇所ことを言っていたのか、結局わからずじまい。

 

なお前半ソロを務めたアレクサンデル・ガジェブのテクニックのすさまじいこと。バーバーよりもアンコールで演奏したラフマニノフに驚嘆。分散和音の濁流のなかで情熱的なメロディーを巧みに浮かび上がらせた、みごとな演奏だった。今度、ラフマニノフの第3番コンチェルトを大阪フィルの定期で聴かせてもらえないだろうか。

 

 
大阪フィル_第516回定期_20180309