2017414日 広島管弦楽団 下野竜也音楽監督就任披露演奏会

 

大阪ザ・シンフォニーホール

1階 P31

 

ブルックナー    :交響曲第8番 ハ短調 ハース版

 

指揮      :下野 竜也

 

演奏会日記のアップをかなりサボっていました。414日の広響から429日の関フィル定期まで、7つの演奏会を一気にアップします。

 

終演後、今年2月に聴講した『世界における我が国オーケストラのポジション』冒頭、海外パネリストによるそれぞれの本拠地で聴いたN響、広響、九響、大阪フィル、アンサンブル金沢の講評を思い出した。あるパネリスト(メモを捨ててしまったので、誰の発言だっか不明)が、“今回聴いた五つの演奏会のなかで、ひとつだけオーケスト演奏にはまったく不向きなホールがあり・・云々”と語り始めたので、てっきりNHKホールのことだろうと思って話を聞いていると、実は広島交響楽団の本拠地のことだった。氏の発言の文脈は覚えていないが、少なくとも広響が定期の会場としている広島文化学園HBGホールを酷評していたことは鮮烈に覚えている。

 

何故こんなことから書き始めるかというと、せっかくの音楽監督就任披露という特別な場でありながら、日ごろそんな“オーケストラを聴くには不向きな”場所で演奏している広響が豊潤な響きを誇るザ・シンフォニーホールに順応させることもなく、力み気味に演奏してしまったことが残念でならないから。今年2月の広響の福山定期公演(会場は永田音響設計の手による音響に優れたリーデンローズ)演奏会日記で“間接音中心の豊潤な弦に対して木管の直接音が少々大きく聞えすぎるきらいはあったけど。。。”と記したけど、この日の演奏を聴いてその理由が腑に落ちた。

 

福山の演奏会も、そしてこの日の就任披露演奏会も、とにかく日ごろ乏しい響きの定期会場と同じように全パートが弾きこみ(吹きこみ)すぎて、少なからず音楽性と響きのバランスを崩してしまっている。この演奏会の2日後に本拠地定期として同曲を演奏することもあり、ホールにあわせて調整をするようなリスクはとらなかったのだろうか、それともそのような機能性は持ち合わせていないということか。週末金曜日のこの演奏会のあと、翌日にトヨタ・マスターズ・ウィーン、そして次の日曜日の京都市交響楽団と、連日ほぼ同じ席位置で一級品の演奏を聴いているので、なおさら分が悪い。終演後、下野竜也が“広島にも聴きに来てください”と客先にむかって声をかけたけど、残念ながら広島の定期会場はその気になれば自宅から1時間で行ける距離なのに、“わざわざ出かけていって音楽を聴く”ところではない。

 

下野竜也の指揮は、先月の読響との第7番と大きくことなり、正統的なアプローチながら、所どころでちょっとした変化をかけていた。昨年2月のバレンボイム・ベルリン国立歌劇場管弦楽団との同曲の演奏会ブログ(場所はサントリーホール)でも記したとおり、この曲に関しては作為的なテンポ変化(コーダのアッチェレランドなど、言語道断だと思う)やアゴーギクを徹底的に排した演奏こそが理想なだけに、たとえば終楽章のコーダ、全楽章の主題が同時に演奏される直前の6小節間をちょっとだけスピードを上げておいて、その後大きくテンポを落としてから最終小節に向かってカタルシスを求めるアプローチなど、いくつか疑問符の付く解釈も散見された。ちなみにこの箇所、ホルン・ワーグナーチューバの8本がばらついたのも残念。如何せん奏者8名のうち6名がエキストラだからいたし方なしか。

 
広島交響楽団_20170414_下野