2016
1106日 備後オペラ団体 “ムジカ・アヴァンティ” ドニゼッティ『愛の妙薬』

 

福山 福山芸術ホール リーデンローズ

1L87番(ピットから2列目)

 

ドニゼッティ: 歌劇『愛の妙薬』

 

指揮: 山上 純司

演出:  豊田 千晶

管弦楽:  府中シティオーケストラ

合唱:  アヴァンティ合唱団

 

アディーナ: 土井 範江

ネモリーノ:    松本 敏雄

ベルコーレ:   山岸 玲音

ドゥルカマーラ: 西田 昭広

ジャンエッタ: 福永 真弓

 

“ブラボー”の一言です。

 

これまで福山市は文化不毛の地と思っていました。芸術・文化に対する意識と熱意が行政から民間まで広く行きわたり根付いている隣県の倉敷市(イオンモール内のMOVIX倉敷でメットライブビューイングを見られる)に対して、同じ瀬戸内工業地域でありながら、大手製鉄所を中心として栄えた福山市には文化の成熟度を全く感じられない、というのが正直なところでした。でも、今日の公演を観て、猛省です。

 

よくぞここまでの舞台を作り上げたものです。恐らく相当に低予算での公演だったのでしょう。舞台装置(いやいや、そもそも装置などないか)は徹底的にお金をかけていない。左右の反響板のデザインをそのままに、ホームセンターで売っているラティスフェンスを左右と舞台奥に並べて、見事にステージを第一幕“村の広場”と第二幕“婚礼の場”にしてしまった。“なるほど、よくぞ考え付きましたねぇ!”と、知恵を絞った演出に唸ってしまいました。

 

アマチュアの合唱は演技も歌もなかなか見事なもの。恐らくステージパフォーマンスをしたことなどないだろうのに、実に“それらしく”演技をしていて、見ていて本当に楽しい舞台になっている。舞台慣れしたように大きな身振りの一部の女性メンバーがいる一方で、多少堅い表情と動作の男性メンバーがいたりで、逆に群集の自然な雰囲気を感じさせた。一人ひとりが考え抜かれたプロフェショナルな演技をする一流歌劇場を見たときの“芸”としての高度な見栄えとは全く違う、群集の“普通さ”が表現できていたのでしょう。

 

府中シティオーケストラの演奏もたいしたもの。開演1時間以上前に会場に行き当日券を買い求めたピットから2列目で聴いたオーケストラの音は、弦も管もピッチが安定していて、音が痩せることなくドニゼッティらしい音楽を楽しく聴かせてくれました。

 

いやあ、とにかく面白かった。合間で拍手したり、2幕のネモリーノのアリアでブラボーかけたりといたしました(普段のコンサートでブラボーかけることなど、まったくない)。やはりイタリアオペラを楽しむには“ノリ”が大事ですからね。

愛の妙薬_20161106