2016
1102日 内田光子 with マーラー・チェンバー・オーケストラ

 

大阪ザ・シンフォニーホール

1階M列席

 

モーツアルト: ピアノ協奏曲第19番 ヘ長調K459

武満徹:弦楽のためのレクイエム

モーツアルト: ピアノ協奏曲第20番 ニ短調K466

 - アンコール  スカルラッティ:ソナタ ニ短調 K9

 

ピアノと指揮:内田光子

マーラー・チェンバー・オーケストラ

 

56歳にして最高の音楽体験。最初のコンチェルトを聴きながら、今耳にしている音楽をどのように受けとめればいいのかずっと言葉を探し続けていたけれど、最後まで見つかりません。思い浮かぶあらゆる言葉を探し出しても伝えきれないまさに奇跡的な音楽です。

 

ピアノとオーケストラが完全に一体化してひとつの個体として音楽を奏でていることに驚きです。例えば主題提示でピアノの旋律の扱いを次に引き継いだオーケストラが全く同じニュアンスで奏でたり、また例えば緩徐楽章で低弦の柔らかい動きをうけて、内田光子の左手がやさしくそれに応えていたり。内田光子と40人ほどのオーケストラメンバー全員が、お互いを認め尊重しあい、どのような音楽を目指すのかについて完全に気持ちが一致していない限りあのような奇跡的な音楽は生まれない。

 

“自己の表現の深化を常に目指していくものこそが真の芸術家”とすれば内田光子こそまさにその言葉にふさわしい。DVDで映像化されている10年以上前のカラメータ・ザルツブルグとの第20番のコンチェルトを愛聴しているけど、ずっとゆっくりとしたテンポと起伏をもって始められた今夜の演奏は、演奏の運びもアンサンブルも、そして細かいニュアンスを含めた旋律線の扱いも、まさにずっと“深化”している。もうこのようなモーツアルトのコンチェルトに接することはできないかもしれません。まさに一期一会です。

 
うちだ