あーと屋のほぼ大阪クラシック演奏会気まま日記

201668日 大阪フィルハーモニー交響楽団 マチネ・シンフォニー Vol.15

 


ザ・シンフォニーホール

 


リムスキー=コルサコフ: スペイン奇想曲

マルコーニ: バンドネオン協奏曲

             ――アンコール ピアソラ:アディオス・ノニーノ

 


ハチャトリアン: バレエ組曲『ガイーヌ』より

                絨毯の刺繍 / レスギンカ / 間奏曲 / バラの乙女たちの踊り

 ヌーネとカレンの踊り / アイシャとガイーヌの情景 / アルメンの不幸

 ガイーヌとアルメンの情景 / ガイーヌとアルメンの愛のデュエット

 山の若者たちの踊り / 剣の舞

 


   ――アンコール バレエ組曲『ガイーヌ』より 収穫祭の踊り

 


指揮:                   井上道義

バンドネオン:  ネストル・マルコーニ

 


朝、横浜で早朝の会議を済ませた後、新幹線で東京に移動して開演直前にホールに飛び込みました。マチネーコンサートは特にここ数年、一流ソロ奏者を迎えての挑戦的なプログラムで楽しませてもらっています。午後2時の開演にむけて私のように時間調整をして聴きに来る(来ることができる)現役世代は稀で(あたりまえですね)シニアの御夫婦をたくさん見かけます。平日の午後に、このような良質のフルオーケストラ・コンサートを三千円で聴くことができるのは本当に素晴らしいことです。大阪在住の方々がうらやましい。

 


やはり『ガイーヌ』は、コンサートのメインには向かないキワモノですね。聴きなじんだ(というより一度聴いたら忘れられない)チェクナヴォリアン・アルメニアフィルの爆演CDを思い比べると、今日のような節度をわきまえた大変にまっとうな演奏では、かえって曲自体の深みの無さが際立って感じられてしまいます。いっそのことならアンコールの“収穫祭の踊り”くらいは超ハイテンションの爆裂演奏をしてくれたら面白かったろうのに。

 


ネストル・マルコーニさんのバンドネオンは楽器左右から鳴る音がそれぞれホール下手、上手の空間に伝わって、一階席中央の自席からはステージ両翼いっぱいに広がった巨大な楽器のようです。てっきりPAを使っているものと思い込んでしまうほどの音量と響きで、たとえば昨年のマチネーでのロドリーゴのギター協奏曲のようにソロ楽器がオケに埋もれることも全くありません。ただし残念ながら、演奏者自作の協奏曲自体は決して面白味のあるものではありませんでした。


大阪フィル_マチネー第15回


201667日 ギドン・クレーメル ルカ・ドゥバルグ デュオ・リサイタル

 


サントリーホール

P

 


ラベル: ヴァイオリン・ソナタ ト長調

ラベル: 夜のガスパール 

イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第5

フランク:ヴァイオリン・ソナタイ長調

  ――アンコール  イザイ:子供の夢

 


ヴァイオリン:ギドン・クレーメル

ピアノ: ルカ・ドゥバルグ

 


地下鉄乗継を誤り マタイ受難曲の開演に間に合わなかった今年3月の経験を踏まえ、早々にサントリーホールに到着し自席についてホールを見渡してみると、精々半分程度の席が埋まっている程度です。バッハの“無伴奏ソナタとパルティータ”(Philipsの旧録音盤)やら、アルゲリッチ・マイスキーとの世紀の共演と話題になったチャイコフスキーのPトリオやら、シュニトケ版カデンツァ付のベートーベンの協奏曲などなど、新録音がリリースされるたびに欠かさず買い求めていた地方在住の私にとって、クレーメルの演奏はジャケット写真の神経質そうな風貌とともに当代一流のヴァイオリニストの一人として鮮烈にイメージされており、当然のごとく今夜の演奏会は満席に違いないと思い込んでいただけに大いに拍子抜けです。クレーメルはクラシック音楽マーケットではすでに過去の人になりつつあるのか、と妙にさみしさを感じてしまいます。

 


ステージ背面のP席最上段で聴くアンサンブルは、間接音中心のふくよかなホールトーンで、かつて盛んに買い集めたERATO盤を聴いているような感じがして、それはそれで心地良かったのですが、いつしか“ダイナミズムや技巧に満ちた”などという表現からは離れた、それこそ無伴奏ソナタとパルティータのジャケット写真そのままの神経質そうな風貌そのままの演奏であることに気付かされます。とくにフランクのソナタの、決して朗々と旋律を歌い上げるようなことの無い、無慈悲さを漂わせた演奏は、まさに私が今までレコードで聴いてきたクレーメルのヴァイオリンでした。

 


しかしなによりも新進気鋭の天才ピアニスト、ルカ・ドゥバルグの演奏を聴くことができたことが今夜の一番の収穫かもしれません。プログラムに記されたプロフィールには驚かされます。世の中には彼のようにgiftetnessを得た人物がいるのですね。


クレーメル_ドゥバルグ


2016531日 シャルル・リシャール=アムラン オール・ショパン・ピアノ・リサイタル

 


シンフォニーホール

1階 中央ブロックL

 


ノクターン ロ長調 作品62-1

バラード第3番 変イ長調 作品47

幻想ポロネーズ 変イ長調 作品61

序奏とロンド 変ホ長調 作品16

4つのマズルカ 作品33

ソナタ第3番 ロ短調 作品58

――アンコール

ポロネーズ 第6番 『英雄』

エネスク: バヴァーヌ 作品102

 


シャルル・リシャール=アムラン

 


集客目的もあってか、主だった作品ジャンルを網羅するように選曲されたプログラムは、とくに休憩をはさんでのマズルカまで、特に個性が際立った歌い回しをすることもなく面白味の乏しい“上手いピアノ弾きのショパン”演奏ですが、終曲のソナタとなるとその姿が一変します。

 


おそらくこのピアニストはショパンよりも、厳格な様式で構成された作品に対する指向が強いのではないでしょうか。とにかくとても聴きごたえのあるソナタでした。ショパンコンクール第2位の看板を掲げてのリサイタル・ツアーが一段落した後もこのまま“ショパン弾き”として活躍を続けるピアニストではないようです。本来なら、アンコール曲もすべてショパンとすべきところを、一曲目で豪快に英雄ポロネーズを弾いて見せた次には、あえてショパンの曲を選ばなかったところにも彼の指向性が現れているような気がしてなりません。

 


ところでアンコール2曲目のジョルジュ・エネスクの名に触れ、自宅CD棚にこの作曲者の作品を収めたArte Nova CDを何枚も未聴のまま置いていることを思い出した。――いま、コンサートから1週間近く経過した週末にこれらCDを一気に聴いています。ー

アムラン_ピアノリサイタル

2016521日 大阪フィルハーモニー第498回定期演奏会 2日目

 


フェスティバルホール

2階 中央ブロック5列目

 


チャイコフスキー: 幻想序曲『ロメオとジュリエット』

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2

  -アンコール  チャイコフスキー:『四季』April. The Snow-drop

ルトスワフスキ:管弦楽のための協奏曲

 


指揮:クシシュトフ・ウルバンスキ

ピアノ:アンナ・ヴィニツカヤ

 


今、まさにメジャーへの階段を駆け上がり始めた若手指揮者ウルバンスキを聞き逃したら、後々に大変後悔しそうな気がして、公演日前日に急遽チケットを購入して聴きに出掛けました。どうやら12階席ともほぼ完売に近かったようです。ウルバンスキの知名度がある程度貢献したかもしれないにせよ、フェステバル・ホールに会場を移して3シーズン目の今年、毎定期かなりの席が埋まるようになってきましたね。

 


3年前、まだ31歳だったこの指揮者が大阪フィルの定期で『春の祭典』を指揮した姿をいまだ鮮烈に記憶しています。さらにその1年前の20122月定期で、当時の音楽監督を務めていた大植さんのいつもながらの自己主張ごり押しの指揮のもと、特に2日目で一瞬演奏が破たんするのではと思うほど危うい演奏をしたこのオーケストラを、この才能あふれる若者は見事にコントロールし均整のとれた『春の祭典』を聞かせてくれました。

 


今夜の演奏も暗譜で振る指揮姿は前回と同じですが、見た目にもスマートな指揮ぶりは一層洗練された様子で、大阪フィルから引き出す音楽もまた、まったく奇を衒うことがなくオーケストラを全く混沌とさせることがありません。本当にいい指揮者ですね。これから40歳、50歳と年を重ねていくことで、どのような指揮者になっていくことでしょう。いずれ関西では迎えることのできないマエストロに成長しているかもしれませんが、もし再び大阪フィルが定期でブッキングすることができるのなら、ドイツ古典派・ロマン派の交響曲作品を聴いてみたいものです。


大阪フィル_第498定期






2016521日 ザ・シンフォニーホール・ビッグバンド Vol.2

 


大阪ザ・シンフォニーホール

1階中央ブロックO

 


Music Director 菊池寿人

Special Gust:古澤 巌

 


プログラム

Just Friends

Mack The Knife

After You’ve Gone

Four Brothers

シェルブールの雨傘(Piano Trio

A night In Tunisia

**休憩

 オレンジ・ブロッサム・スペシャル

Sweet Georgia Brown

シェヘラザード(アラブの歌~オリエンタル・ダンス)

マンボNo. 5

Take Five

Spain

――アンコール

Livertang On Fire

Sing, Sing, Sing

 


フェスティバルホールの大阪フィル定期会員席券を知人に譲ってでも、どうしてでも聴きたかったコンサートです。よりによって今週は火曜日から横浜、東京と出張となったものの、上司の了解を得て夕方3時に東京オフィスを飛び出し、新幹線に飛び乗ってギリギリ開演に間に合いました。(不本意ながら、もうひとつ楽しみにしていたデュメイがVn独奏と指揮をする木曜日の関西フィル274回定期はあきらめました)

 


今年1月のVol. 1の時は、特に前半プログラムでは比較的オリジナルをリスペクトしたアレンジでメンバーのアドリブソロをたっぷりと楽しませてくれたけど、今夜のVol. 2では、“もうこのバンドのご紹介は結構でしょっ!”といった感じで、Piano Trioによる“シェルブールの雨傘”で、クソ真面目なテーマ演奏から一転、コンテンポラリージャズを聴かせてくれたり(Vol. 1の時と同様、ピアノの宮川真由美さんのノリノリ演奏が素敵です)、A night In Tunisiaでゲストパーカショニストをフューチャーしたりと捻りを効かせた演奏の連続です。中学・高校時代レコードを擦り切れるまで聴いたペレスプラード楽団のマンボNo.5がもう、“マンボ”じゃ無くなってるし、Take Fiveなどは4拍子にアレンジされてる!

 


ちょっと残念だったのは、後半から参加の古澤巌さんのヴァイオリンがホーンセクションに埋もれてしまっていたこと。それでも最後のあたりではソロが浮かびあがって聞えだしたのは私の耳が慣れてきたからでしょうか、それとも一階席最後列に置かれていたPAステーションでバランスの調整をかけたのでしょうか?

 


次回Vol.3は困ったことに週末土曜日です。通常は大阪に居ないので聞きに行けないかも・・・・。

シンフォニーホール_ビッグバンドVol2




2016513日 日本センチュリー交響楽団 第209定期 1日目

 


大阪ザ・シンフォニーホール

1階中央ブロック

 


チャイコフスキー:交響曲第6番 

==“あと割”利用 プログラム後半のみ

 


指揮:ドミトリー・リス

 


特にこの日の悲愴交響曲のように日頃から実演やCD.DVDで接する機会の多い曲の場合、たとえ有名指揮者・一流オーケストラでなくても新鮮な感動が得られるときもあれば、本日のように何のインスピレーションも共感も得られない時もあります。指揮者の大きな身振りが上滑りするままに楽章が進んでいくことで、いつの間にか耳に聞こえてくる音から気持ちが遠ざかってしまい、ふっと気が付くと気忙しい日常のことをぼんやり考えているうちに曲が終わっていました。

 


“あと割”1,500円でプログラム後半のみですが、前半のショスタコーヴィッチのVn Cから通して聴いていたら、もっと別の感想を持てたのかもしれません。

 


以上、演奏会の防備として





2016429日 関西フィルハーモニー管弦楽団 第273回定期演奏会

 


大阪ザ・シンフォニーホール

2DD

 


ラフマニノフ    :鐘(原曲:前奏曲嬰ハ短調OP3-2

ラフマニノフ    :ピアノ協奏曲第3

  ― アンコール  

横山幸雄:アヴェ・マリア~バッハ = グノーの主題による即興(2000

菅野 祐悟        :交響曲第1番【世界初演】

 


指揮      :藤岡 幸夫

ピアノ  :横山 幸雄

 


昨年8月の関西フィル・いずみホール「Meet the Classic」で菅野祐悟さん作曲の“琴と尺八と管弦楽のための協奏曲~Revive~”を聴いて以来、大変に楽しみにしていた演奏会です。18歳から10年間ほど琴古流尺八を習っていたこともあり、尺八やお琴といった邦楽器が西洋楽器と一緒に演奏することがいかに至難なことかをよく知っているつもりなので、その日の演奏で尺八(当然ながら都山流)と20弦奏者の演奏技術もさることながら、これら邦楽器を見事に取り込んだ作曲の才能に感服したものです。

 


さて、そのMeet the Classicのステージ上で藤岡幸夫さんから世界初演がアナウンスされた交響曲第1番ですが、“定期のメイン・プログラムに据えるに足る作品ではなかった”というのが率直な感想です。(音楽とは常に個人の感性にて受け止められ、評価されるものですから、どうか許していただきましょう)。 “吹奏楽曲のオーケストラ編曲版”を聴いたときのような曲展開のつまらなさを感じてしまった第1楽章に比べ、後半楽章はまだ聴いていて面白味はあるのですが、まるで映画や大河ドラマのサウンドトラックを聴かされているよう。ラフマニノフ風のメロディーが展開された先でピアノがアルペジオを弾きだした際には、さすがに“おいおい、シンフォニーでそれはないでしょうぉ”と思ってしまった。――繰り返しになりますが、どのように感じるかは人それぞれですので、私の演奏会日記として、ご無礼をお許しください。

 


前半のラフマニノフは凄かったなあ。それとアンコール曲は横山さんの作品集としてCDが出ていますね。この連休中に買って聴いてみることにします。

 
関西フィル_273


2016422日 延原武春 テレマン室内オーケストラ J.Sバッハ

 


ザ・シンフォニーホール

1階中央ブロックE

 


J.S.バッハ      :ブランデンブルグ協奏曲第1

                :管弦楽組曲第2

                :ブランデンブルク協奏曲第5

                 ~休憩~

                :ブランデンブルグ協奏曲第4

                :管弦楽組曲第3

―アンコール  

G.Ph.テレマン 3つのトランペットとティンパニのための協奏曲ニ長調 第12楽章

 


指揮 :延原武春

バロック・ヴァイオリン:ウッラ・ブンディース

フルート:リコーダー 森本英希

リコーダー:村田佳生

テレマン室内オーケストラ

 


延原武春さんは数年前にいずみホールでの大阪フィルとのベートーベン交響曲ティクルスでその存在を知って以来、いつか主催団体であるテレマン室内オーケストラの演奏を聴いてみたいと思っておりました。

 


正直なところ、昨年クイケン&ラ・プティット・バンドの演奏(ブランデンブルグ全曲)を聴いた後では、どうしても聴き劣りがしてしまう。特に管楽器の演奏レベルは、その演奏が非常に難しいことを十分に承知したうえでも、やはり大阪という地方をベースに活躍している演奏団体では厳しいものがある。第1曲目の3番オーボエの奏者は学生さんなのか、音を出さない時の不安げな姿は客先から見ても心配になるくらい。正直、最初の曲を聴きながら“しまった、時間とお金を無駄にしたかなぁ…?”と一瞬思ってしまったほど。

ただ、弦楽の人数を絞った編成での第2曲以降は、古楽アンサンブルを十分に楽しませていただきました。


延原武春_バッハ


2016417日 京都市交響楽団 創立60周年記念 大阪特別演奏会

 


ザ・シンフォニーホール

1階P列31

 


リヒャルト・シュトラウス: ツァラトゥストラはかく語りき

サンサーンス:交響曲第3番『オルガン付』

   アンコール  マスカーニ: カヴァレリアルスティカーナ『間奏曲』

 


指揮 :広上 淳一

オルガン:アレシュ・バールタ

 


一言“すごい!” 国内トップレベルの演奏団体のひとつと巷で評されるのも頷けます。個人的には大阪フィルの30年来のファンだけど、演奏団体のレベルは京響のほうが一ランク上でしょう。時につまらない指揮者で凡庸な演奏を聴いたときは、気付かぬうちに日常のことをふっと考えていたりするものだけど、二つの大曲とも一瞬も気持ちが離れることのない濃密な音楽体験でした。

 


実のところこれまで、シンフォニーホールのパイプオルガンについてはあまり高く評価しておりませんでした。例えば他のホールでの腹部が震えるような重低音や、いずみホールのパイプオルガン演奏で耳元の空気が微かに振動するかのような微弱音といった体験を得た記憶がまったくないのです。サンサーンスのオルガン交響曲に限っても幾度となくこのホールのパイプオルガンを聴いてきたけど、恐らく“ゴージャスな”という表現のふさわしくない中型規模の楽器なのだろうからこの程度なんだろう、と思い納得しておりました。ところが、それも今夜の演奏で覆りです。

 


2楽章後半部分で、ハ長調の和音がホール全体に圧倒的に響き渡ったのを聴いたのは今日が初めてです。まったくの素人推測ですが、ストップの選択の結果なのでしょうか。だとしたらアレシュ・バールタさんという一級のオルガン奏者を招へいしたことが大正解だった、ということでしょう。

 


毎度のこと、パイプオルガンのハ長調の和音が鳴り響いた途端に、涙腺が緩んでしまいます。この曲は“ライブ”できかないと面白さがわからないオーケストラ曲の最右翼でしょう。


京都市交響楽団_大阪特別


2016416日 諏訪内晶子 ヴァイオリン・リサイタル  

ザ・シンフォニーホール

 


ヴァイオリン: 諏訪内晶子

ピアノ      : エンリコ・パーチェ

 


モーツアルト    : ヴァイオリン・ソナタ K305

グリーグ    : ヴァイオリン・ソナタ第3

武満徹    : 悲歌(エレジー)

フランク    :バイオリン・ソナタ 

    アンコール   クライスラー:クープランのスタイルによる“才たけた貴婦人”

                ラフマニノフ:ヴォカリーズ

 


フランクのバイオリン・ソナタは、この一年ほどでも樫本大進さん、崔文洙さん、宮田大さん(Vc)と生演奏を聴く機会の多い曲だけど、こんなに集中して全曲を聴き通したのは初めてかもしれません。

 


たとえば9月にフェニックスホールで聴いた崔文洙さんの演奏では、ヴァイオリンに挑みかかるかのような強打鍵のピアニストにがっかりさせられたけど、この夜のエンリコ・パーチェさんのピアノ演奏は、十分にロマンディックでありながらも無理に主張しすぎることがなく、時に諏訪内さんのヴァイオリンに寄り添い、時に対話するかのようです。

 


モールアルトのソナタには器の大きすぎるシンフォニーホールもフランクの作品を聴くにはまったく不満の感じられない音空間の中でアンニュイで特異な音の世界に身を浸し続けることができました。

201648日 大阪フィルハーモニー第497回定期演奏会 1日目

 


フェスティバルホール

1階 定期会員席

 


ドビュッシー:交響詩「海」

吉松隆:トロンボーン協奏曲『オリオン・マシーン』

  -アンコール  モーツアルト:レクイエム トゥーバ・ミルム冒頭部分

 


プロコフィエフ:バレエ音楽『シンデレラ』抜粋

1幕より  序奏、父親、仙女のおばあさん、踊りのレッスン

2幕より  舞踏会に着いたシンデレラ、グラン・ワルツ、来客への御馳走、

王子とシンデレラのパ・ド・ドゥ、ワルツ~コーダ、真夜中

3場より  王子の最初のギャロップ、愛をこめて

 


演奏会から一週間もたってしまいました。以下、演奏会の防備メモとして。。。

 


定期演奏会の新しいシーズン開始としては、大変に変わったプログラム構成で、よく言えば従来の大阪フィルとは異なる新機軸とも言えるのでしょうか。グローフェの組曲「グランド・キャニオン」のような駄作をメインにすえるなど、首を傾げざるを得ないような昨年4月の定期演目までではないにしろ、個人的には“大阪フィルの定期で聴きたい曲目ではなかった”というのが正直なところ。

 


ドビュシーの『海』の実演に接するのは初めてで楽しみにしていたのですが、残念ながら色彩のヴァリエーションを十分に感じられず。吉松隆のトロンボーン協奏曲は、せっかくステージ両翼に広がるように配置された2群のオーケストラが、見た目ほどには音響効果を発揮せず。大阪フィル_定期497回

201646日 トヨタ・マスター・プレーヤーズ・ウィーン・プレミアム・コンサート

 


大阪ザ・シンフォニーホール

1

 


トヨタ・マスター・プレーヤーズ、ウィーン

Vn      :フォルクハルト・シュトイデ、小林美樹

Cl      :ペーター・シュミードル

P       :山本貴志

 


J.S.バッハ      2つのヴァイオリンのための協奏曲 ニ短調 BWV1043

ドニゼッティ    :クラリネット小協奏曲変ロ長調

モーツァルト    :ピアノ協奏曲第21番 ハ長調 K.467

ベートーヴェン  :交響曲第6番 へ長調 op.68 「田園」

  アンコール   ヨハン・シュトラウスⅡ:『ウィーン気質』

 


演奏会から10日も経過してしまいました。今日これから諏訪内晶子さんのヴァイオリンリサイタルを、そして明日は京都市交響楽団の演奏会を聴く予定であるのに、このトヨタ・マスター・プレーヤーズ、ウィーンと先週末の大阪フィル定期演奏会をやっとで記しています。時間の経過とともに、その時の共感やら感動が少しずつ薄れていきますね。やはり演奏会日記はできるだけ、その日のうちに書き留めないといけませんね。

 


ほとんどウィーンフィルのメンバーで構成された30名の室内オーケストラは全員が呆れるほど上手い。指揮者なしで田園を演奏してしまうのだから、“ウィーンフィルは時に気に入らない指揮者の際は、タクトを無視して勝手に演奏してしまう”という話も、さもありなんと思ってしまう。

 


モーツァルトのPコンで共演した山本貴志さんの小柄な体を鍵盤に覆いかぶさるようにして奏でる独特な姿は、漫画スヌーピーに出てくる天才ピアニスト・シュローダー君のよう。小編成のオーケストラをバックに一音一音を愛おしむような演奏は、10日たった今も忘れられません。

 トヨタ_マスター


2016326日 日本センチュリー交響楽団 第207定期 2日目

 


大阪ザ・シンフォニーホール

1F

 


ラフマニノフ: ピアノ協奏曲第2

―アンコール シューベルト:即興曲第4

チャイコフスキー:マンフレッド交響曲

 


指揮            :飯森 範親

ヴァイオリン    :ヤン・イラーチェク・フォン・アルニン

 


週末も大阪で過ごすことになったのをこれ幸いに、マンフレッド交響曲を再度じっくりと聴いてみたいと今シーズンから始まった定期二日目を半額で聴ける “おか割” 制度を利用して今日もザ・シンフォニーホールへ出かけました。初日に2階席後方FF列席で聴いていると弦の量感がどうしても劣って聴こえるのと、ピアニストの指の動きをまじかに見てみたいと思い “おか割” 席枠の中から迷わず1階席のステージ下手6列目を選択しました。

 


ラフマニノフの協奏曲はピアノソロが導く冒頭主題が  “これからの遵法運転”  を宣言したかのような遅めのテンポに終始し、ソロが離れオーケストラのみでテーマ終結に向かうと“これはたまらん”とばかりにテンポアップするところは初日とまったく同じ。初日の“アンチロマンティシズムを信条とするピアニストが真面目に演奏するラフマニノフ”との印象は多少薄れたものの、抒情性からは数歩ひいた演奏表現で 、あまり面白味のある演奏ではありませんでした。結局、両日とも飯森さんのオケ伴のセンスに感嘆しながら聴いていました。

 


マンフレッド交響曲は、残念ながら世間一般では大変肩身の狭い “不人気曲” のようだけど、チャイコフスキーの管弦楽作品の中でもなかなかの秀作だと思うし、冒頭ファゴットとバスクラによる奇異な音色で示される “マンフレッド” の世界観が支配した連作交響詩として捉えて聴くと、大変に面白く、また60分の長さも苦痛にならない。特に曲の最後、オーケストラが沈黙したあと一呼吸おいてホールにパイプオルガンが鳴り響いてから終結までのカタルシスはこの曲を聴く一番の楽しみです。

 


ところで、度ごとにこの日記に書いているけど、この日本センチュリーはオリジナルメンバーによるチェンバーオーケストラとして編成されたときこそ、最高の演奏を聴かせてくれるようだ。今日のようにエキストラを交えて大編成の曲になると、例えばマンフレッド交響曲第2楽章の終結部、Vn4部に分かれて微細な演奏を繰り広げるところなど、目を見あって真剣勝負でアンサンブルを試みる正規メンバーの一方で、譜面を追いかけ耳だけで合わせるエキストラとが微妙なズレと濁りを生じさせてしまう。


日本センチュリー_207回定期


2016325日 日本センチュリー交響楽団 第207定期 1日目

 


大阪ザ・シンフォニーホール

2階中央ブロックFF

 


ラフマニノフ: ピアノ協奏曲第2

―アンコール グラナドス:スペイン舞曲集第2番“オリエンタル

チャイコフスキー:マンフレッド交響曲

 


指揮            :飯森 範親

ヴァイオリン    :ヤン・イラーチェク・フォン・アルニン

 


会場に入ってオルガンの鍵盤カバーが開いているのをみて“よっしゃぁ”と心の中でひとこと。マンフレッド交響曲は3年前に実演を聴いたウラディーミル・フェドセーエフさん指揮・大阪フィルの定期はオルガン無しの原典版だったので、今回はオルガン付の改訂版を聴きたかったのです。実力あるエキストラを加えた大変安定感のある管セクションの好演もあり大変充実した演奏会でした。今シーズンから始まった“おか割”で明日も聴きに行くことにしました。演奏の感想は明日の演奏会日記に・・・・日本センチュリー_207回定期

2016318日 新日本フィルハーモニー交響楽団 大阪特別演奏会

 

ザ・シンフォニーホール

2AA27

 

シューベルト: 交響曲第1

マーラー:      交響曲第1

  

指揮     :上岡 敏之

 

昨年12月の読響第九演奏会の日記で“来年3月の新日本フィル大阪特別公演でシューベルトとマーラーをどのような解釈で聴かせてくれるか心待ち”と書いたけど、実際の演奏は、相当にぶっ飛んでいましたね。前半のシューベルトはアレグロ・ヴィバーチェでも特段に早過ぎたりリズムを強調しすぎることもない“普通”な演奏でしたが、後半のマーラーは、曲全体の構成、パート間のバランス、旋律の歌わせ方など、いままで聴きなじんだ“巨人”とは違う、なんとも“!?”な演奏でした。

 

第一楽章の開始早々から困惑させられます。木管のカッコウのみが強調されたピアニシモの序奏に続いてVcが“若人の歌”の第一主題を奏でるところ、通常は青春を謳歌するかのように軽やかに楽しげに弾かれるところを、それまでの提示部と変わらず微弱なまま(確かに楽譜指定はppだけど)演奏されたものだから“あっ聴こえないっ、耳がおかしい”と思わず耳抜きをしてしまいました(飛行機が着陸したときにする“あれ”です)。

 

変わった演奏・解釈の例示は、例えば第1楽章での楽譜指定を超えた、執拗に繰り返されるVcのグリッサンド、第2楽章オスティナートでのVcとベースの奇異なリズム取り(不思議なことにトリオのあと回帰してからは楽譜通りのリズム刻み)、第3楽章カノンの主題がppで折り重なっていくなか、楽譜指定はpで目立つように演奏するはずのオーボエのモチーフがカノンに埋もれるくらい最弱奏されるなどなど、ほんとにキリがない。

 

弦セクションは14 + 11 + 9 + 8 + 6と少なめにしても、意外なほど音量が無い(席は2階最前列中央)。日頃、大阪フィルの大きな音に慣れてしまっているわけではないけど、最終楽章に至っても“あれっこんな程度?”というのが正直な感想。もしかしたら半年前にサントリーホールで聴いたチョン・ミョンフン、東京フィルの18型(ベース10本)の爆音にいまだに憑りつかれているかもしれません。


新日フィル_大阪

2016313日 京都市交響楽団 第599回定期演奏会

 


京都コンサートホール

P オルガン階323

 


マーラー:交響曲第6

 


指揮  :高関 健

 


大阪からJR線と地下鉄を乗り継いで会場に到着したのが、開演わずか10分前。通路の扉から高関さんのプレトークの最後あたりを立ち聞きしてから自席のオルガン席へ着くと、正面1階平土間は大変寂しくせいぜい6割程度の入り。どうやら最安値の(でも音は申し分ない)オルガン席が最も埋まっていたみたい。

 


あまり大きくないステージ上にぎっしり埋まったカウベルなどの数々の打楽器群、ハープ2台、チェレスタ2台まで含めた110名フル編成のオーケストラは全員が大熱演で、最後まで異常なまでの緊張感が途切れることがない。弦セクションは後ろのプルトまで集中しまくりだし(大阪フィルもこうならないかなぁ)ブラス群もみんなとても上手。特にホルンの深みのある音色とTop奏者のソロの安定感はすばらしい。舞台手前左右に高いひな壇が置かれ、両翼配置のVn最後尾プルトはちょうど私の目線位置まで持ち上がっていたおかげで、弦セクションの音がどんどん飛んでくる一方で、ブラスの刺激的な音圧は正面に抜けていく。もしかしたら本日の編成、配置では最高の席だったかもしれない。

 


高関さんの指揮はマーラー演奏で用いられる常套句 “情念の起伏” とか “カタルシス” などと表現される、少なくとも私が聴きなじんできた演奏スタイルには背を向けた解釈で、特に第1楽章など曲のもつ推進力そのままに突き進んでいく。日頃からのファーストチョイスであるバーンスタイン(新旧両盤)やテンシュテントの演奏と比較しながら聴いてしまった上に、プレトークで耳にした“細かな指揮者自身による改訂”箇所が気になって、どうにも音楽に浸りきれなかった、というのが正直なところ。いつもなら全曲を聴き通すたびに疲労困憊するこの曲も今日の演奏は聴き終えてもまったく精神的に “疲れない” 演奏でした(もちろん決して悪い意味ではありません)。できるならもう一度あたまから全曲聴き通したい、と思ったほど。もしこの日が定期初日(土曜)なら、迷わず当日券で翌日も出掛けたことでしょう。

 


ちなみに私には今日の演奏のようにアンダンテ、スケルツォの順がすっきりと腑に落ちます。第1楽章が破壊的であるほど後に続くアンダンテに安らぎを感じられるし、また低弦ピチカートに続いてチェレスタとハープの分散和音で開始される悲劇の最終章の前には、面妖なスケルツォこそふさわしい。

 


閑話休題

どうもこのホールはアクセスも館内のフロアデザインもあまり好きになれません。地下鉄の最寄駅出口から会場まで別の施設を迂回しないといけない、正面玄関を入ると無意味に長いスロープを360度ぐるりと歩かされる、館内のトイレの位置がわかりにくい、などなど。加えて特に1階席前方はステージを高く見上げるようだし、後方の席はステージから音が飛んでこない。個人的にはオルガン席の上段がベストチョイスだけど、唯一の難点は木製のベンチシートであること。誰かが深く座りなおしたり、背もたれにすがったり(逆に背をうかしたり)すると列全体に波及してしまい、特に今日のように80分余りの大曲になると、どうにも気を使ってしまいます。

 


ところでオーケストラが乗っている舞台と同様、このオルガン席も全体が大きな一つの木箱のような構造になっており、木製の長椅子がその木箱の上に置かれているようです。実はここ最近、足にできた “魚の目” に悩まされており演奏会に出かけると、着席と同時にこっそり靴を脱いで演奏を聴いているのですが、開演前のウォーミングアップ時からチューバの音に床が振動してビリビリと足裏に伝わってくるのがわかります。見渡すとホール全体が木製の筐体となるような構造のようです。残念ながらフルオーケストラには決して適した音響のホールとは思わないのですが、ピアノや室内楽の演奏には最適なのかもしれませんね。

 
京響第599回定期


2016312日 大阪フィルハーモニー第496回定期演奏会 2日目

 


フェスティバルホール

2階6列目

 


リャードフ:交響詩「魔法にかけられた湖」

プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲 第1番 ニ長調

  -アンコール  J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番 ラルゴ

 


ラフマニノフ:交響曲 第2番 ホ短調 

  -アンコール  エルガー:エニグマ変奏曲 第9変奏「ニムロッド」

  

指揮     :尾高 忠明

ヴァイオリン :諏訪内晶子

 


昨日に引き続きラフマニノフの延々と続く美しい音楽を堪能しました。全曲通して聴き通すのはなかなか大変な曲ですが、今回二日続けて聴いて60分という長さだけではない別の理由に気が付きました。ロシアロマンティシズムで満たされた長い緩徐楽章が終わり華やかな終楽章に入ってからも、それまでどっぷり身を浸していた前楽章の甘美なメロディーが回想されてくるため、一度片隅に追いやった情感が引き戻されてしまうのです。この曲は一度ハマると抜けられなくなります。

 


ところで、開演前のホワイエで行われる大阪フィル福山演奏事業部長のプレトークで、「どうやって定期演奏会の指揮者を選ぶのか」という質問に答えてオーケストラとの“相性”を一つの条件に挙げていらっしゃったけど、尾高さんは大阪フィルともっとも相性の良い国内指揮者の一人でなないでしょうか。 両手の指先から投げかけられる各セクションへの指示が奏者の奏でる音として具現されていく様は、音楽をライブで体験する醍醐味だし、まったく変わらない演奏解釈を二日続けて行うこと自体、オーケストラメンバーが指揮者を受け入れ、その表現指示の意図を汲み取ってこその結果だと思います。少なくとも尾高さんの指揮では、“定期初日はゲネプロ”は杞憂でしょう。

 


ついでにもう一つ。数年前にコンサートマスター2名体制(当初は3名)なってから常に感じていたことだけど、崔文洙さんがコンマスに座った時のオーケストラの音が明らかに違いますね。特に昨年10月から加入した同じく経験豊富なVla 首席と向かい合ってオーケストラを統率する様は見ていて惚れ惚れとします。


大阪フィル_第496回定期

2016311日 大阪フィルハーモニー 496回定期演奏会 1日目

 


フェスティバルホール

1階中央ブロック 中央 定期会員席

 


リャードフ:交響詩「魔法にかけられた湖」

プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲 第1番 ニ長調

  -アンコール  J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番 アンダンテ

 


ラフマニノフ:交響曲 第2番 ホ短調 

  -アンコール  エルガー:エニグマ変奏曲 第9変奏「ニムロッド」

  

指揮     :尾高 忠明

ヴァイオリン :諏訪内晶子

 


ラフマニノフのシンフォニーのあと尾高忠明さんが三回目のコールを受けてマイクとともに舞台に登場すると、“ふつう大阪フィルさんは定期演奏会ではアンコールは演奏いたしません、自分もラフマニノフを指揮したあとにはアンコールはしたくないのだけど、今日は特別です。”と告げてから3.11大震災の追悼としてエルガーの「ニムロッド」が演奏されました。どの演目にも用いられないコントラファゴットがステージにずっと置かれていたので不思議に思いながら聴いていたのですが、「ニムロッド」のためだったのですね。

 


ところでアンコールを告げるスピーチで“前回、大阪フィルを振ったのはシンフォニーホールでの最後の定期(20143月)だった。”とおっしゃられたけど、その年の7月の第2回ソアレ・シンフォニーでエルガーの交響曲第1番を振ってらっしゃいますよ。。。≪どうでもいいか≫

 


この週末は大阪に滞在するので明日第2日目も聴きに行きます。


大阪フィル_第496回定期


2016310日 Tomorrow Concert

ソプラニスタ+クロマチック・ハーモニカ with 京都フィルハーモニー室内楽団

 


ザ・シンフォニーホール

1H

 


指揮                       :井上 誠貴

ソプラニスタ               :岡本 智高

クロマチックハーモニカ     : 南 里沙

京都フィルハーモニー室内楽団

 


J シュトラウス:ワルツ「春の声」              オーケストラのみ

マスカーニ:歌劇「カヴァレリアルスティカーナ」より間奏曲  オーケストラのみ

モンティ:チャルダッシュ                   W/  南 里沙

荒城の月                           W/  南 里沙

モーツアルト:オペラ「魔笛」より“夜の女王のアリア”     W/  南 里沙

ヘンデル:オペラ「リナルド」より“私を泣かせてください”   W/ 岡本智高

カッチーニ:アヴェ・マリア                  W/ 岡本智高

プッチーニ:歌劇「トゥーランドット」より“誰も寝てはならぬ” W/ 岡本智高

 


チャップリン:映画「モダンタイムス」よりスマイル   オーケストラのみ

ヘンリー・マンシーニ:映画「ひまわり」のテーマ  オーケストラのみ

南 理沙: ベガの涙                               W/ 南 里沙

夢やぶれて ~レ・ミゼラブルより                   W/ 南 里沙

見上げてごらん夜の星を                             W/ 南 里沙

アメイジング・クレイス                             W/ 岡本智高

愛燦々                                             W/ 岡本智高

タイム・トゥ・セイ・グッバイ                       W/ 岡本智高

 ― アンコール ふるさと

 


良質な音楽番組で毎週楽しみにしているBSジャパン“エンター・ザ・ミュージック”の昨年98日放送の回に南里沙さんがゲスト出演してクロマティック・ハーモニカを紹介していた。番組ナビゲーターの藤岡幸夫さんとテレビ東京の局アナが番組内で南里沙さんの演奏に目を丸くしていたけど、今日はザ・シンフォニーホールのお客さん全員が魅了されたに違いない。哀愁を帯びたメロディーこそこの楽器の真骨頂で“荒城の月”や“見上げてごらん夜の星を”そしてリリシズムに満ちた南里沙さんオリジナルの“ベガの涙”を聴いていると、自分も吹いてみたい、吹けるようになりたい、と思ってしまう。

 


ソプラニスタの岡本智高さんは、明るく人懐っこそうなお人柄をにじませたステージで楽しませてくれた。ただしクラシックオタクのコメントになるけど、目を閉じて聴いていると、決して卓越したテクニックと声量があるということもない。特にオペラ「トゥーランドット」の“だれも寝てはならぬ”は2週間前にメット・ライブビューイングでドラマチコ・テノールの美声を難波パークスで聴いたばかりなので、私にとってはかなり分が悪い。

 


Tomorrow Concert_シンフォニーホール_20160310

201639日 聖トーマス教会合唱団&ゲヴァントハウス管弦楽団 J.S.バッハ「マタイ受難曲」

 


サントリーホール

115列 (ただし、第一部は2階最後尾で立ち見)

 


指揮    : ゴットホルト・シュヴァルツ

 


ソプラノ:シビッラ・ルーベンス

アルト  :マリー=クロード・シャピュイ

テノール:ベンジャミン・ブルンス、マルティン・ペッツォルト

バス    :クラウス・ヘーガー、フローリアン・ベッシュ

 


聖トーマス教会合唱団

ゲヴァントハウス管弦楽団

 


悲しいかな私は、いまやネットを通じて容易に接しうるこの曲に対する称賛の言葉を寸借することなく、3時間にも及ぶこの大曲の偉大さと価値を表現するにふさわしい豊富な語彙を有していない。ただ一言、私はこの日の「マタイ受難曲」に深く感動した。

 


「マタイ受難曲」は一昨年の大阪フィル第483回定期でヘルムート・ヴィンシャーマンさんの指揮で聴いて以来だけど、聖トーマス教会合唱団とゲヴァントハウス管弦楽団が演奏する「マタイ受難曲」は全く次元の異なるものでした。独唱者、特にイエスとエヴァンゲリストの2人の歌唱の見事なこと。まったく濁りの無いゲヴァントハウス管弦楽団の響きの典雅なこと。第47曲の“憐れみたまえ、わが神よ”と歌うアルトのアリアの深い悲しみに満々た歌唱と、わずかにヴィブラートを効かせたコンサートマスターのヴァイオリンのむせび泣くようなソロには心震わされました。

 


そしてなにより聖トーマス教会合唱団の時に力強く、時に清廉な歌声の素晴らしいこと。作曲者自身がトーマスカントルとして「マタイ受難曲」を初演した事実、数百年と積み上げられた伝統、厳しく訓練された歌声・・・なんと小学生くらいの年齢の子供たちが何人も暗譜で歌っていました。

 


演奏が3時間にも及ぶためか開演が通常より早い6時半であることは承知してけれど、東京オフィスを出るのがギリギリになったこと、加えて慣れない東京地下鉄の乗継を間違えてしまい、サントリーホールに飛び込んだ時にはすでにホワイエに導入合唱がスピーカーから流れていた。“前半のどこかのタイミングで入場できるように計らう”との係りの方の指示で2階席後方の扉の前で待機していると、しばらくして他の20人ほどの同じく遅れて会場入りした人たちとともにこっそりと入場を許され、2階最後部から立ち見で鑑賞することになりました。扉後ろで整列して入場を待つ際に、他の男性の手持ちのビニール袋を指示して“カサカサ音を立てるものを事前に仕舞い込むように”と念押しするなど、実に配慮の行き届いたフロアマネージメントでした。

 


ところでサントリーホールは本当に良いホールですね。図らずしも第一部を2階席最後尾で、そして第二部を1階席中央15列で聴いたのだけど、響きもバランスもほとんど変わりなく鑑賞することができました。(もちろん2階最後尾ではフルオーケストラの圧倒的な音圧は無理でしょうけど)

 ゲヴァントハウス_マタイ


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